〓〓〓〓2005.4.8〜2005.1.23の『ぶつぶつ日記』〓〓〓〓

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◆2005.4.8(金)『感謝状を頂きました』
 先日修復いたしました薬師如来像の開眼式に参加させて頂き、そこで本山の醍醐寺様より感謝状を頂きました。本山の方から頂けるとは、非常に光栄でした。仕事場に飾っています。良い記念となりました。

◆2005.4.7(木)『年輪年代測定法』
 
今回修復したお仏像の体幹部材には、木材の一番外側を形成する辺材(しらた)を含んでいました。年輪の間隔を計測し、その規則性によって、木材の伐採年を割り出す方法が、研究され、建築の文化財にはよく用いられています。仏像の場合は辺材が虫喰われやすいこと等から、用材の段階で除去される事が多いので、この方法で年代を特定できる事は稀です。
しかし残念ながら、本像に使用されている、カツラやサクラなどの広葉樹はまだ年輪尺が出来ておらず、年輪年代測定法による造像年代の特定は難しいとのことでした。桧や杉ならばできるそうです。

将来、年輪尺が整備され、本像の造像年代を確定出来る日も来ると思われます。たのしみです。

◆2005.4.6(水)『新潟県立埋蔵文化財センターを見学して参りました』
 
新潟県立埋蔵文化財センターを見学させて頂きました。かなり大きく、予想よりたくさんの人が働いていて驚きました。新潟県内で発掘された出土遺物を一手に保存処理する施設です。

木製品、金属製品、土器などの出土遺物を保存処理していました。
 木製品はかなり特殊な条件が揃い、水に浸かっていた為に腐朽をまぬがれて、時代を経ても残る場合があります。発掘した後に放っておくと、水分が蒸発して縮んでしまいます(中が殆どが水分になってます)。そこで、内部の水分と樹脂を置換して、強化します。PEG(ポリエチレングリコール=石鹸のようなもの)やラクチトール(しょ糖=板ガムの周りについている白い粉)やアクリル樹脂を使います。ここではラクチトールを用いていました。PEGよりも処理時間が短縮され、木としての質感を残した処理法になっていました。

 金属は純水で脱塩して、保存処置をしてから、錆を除去して元々のかたちに近づけます。 

 土器は、パズルのように組み立てて、欠失した部分を樹脂で補います。なかなか大変な作業です。

とにかく、保存処理を待っている遺物が半端でない量で、どんどん遺物が持ち込まれて来ます。そして、処理したものを保管します。お話を聞いただけで目がまわりそうです。

発掘、保存処理、研究、展示(少し小さいです)という4つが揃った施設。理想的です。仏像修復でも本当はこういう環境が理想なのですが、、、無理でしょう。

新潟県立埋蔵文化財センターのホームページ

◆2005.3.31(木)『新潟市歴史博物館に行ってきました』
 今日は新潟市内に用事があったので、新潟市歴史博物館に寄って来ました。新しい博物館ですし、正直あまり期待せずに行きました。展示スペースはそんなに広くないのですが、新潟という都市の成り立ちが良く分かる展示で、とても興味深く観覧しました。特に15??年に醍醐寺のお坊さんが歩いた道筋を解説したものと、新潟周辺の荘園の解説は非常に興味深かったです。私が丁度疑問に思い、調べていた事が理解できました。

私がお仏像を修復させて頂いたお寺もそこに重なっていました。『どうしてここに平安仏がいるのか』という疑問を少し解明できました。

私はここのところ、昔の人が通っていた古い道をたどって、お寺を訪ねてみたりしていました。割合、そのような古道や交通史を研究をしている資料が無く、どのようにたどれば良いのかを考えつつ、自分なりの推測と道の雰囲気を感じつつ回っていました。この博物館の展示でそれがかなり的を得ていた事がわかりました。この展示を監修された学芸員の方にどうしてもお話を聞いてみたくなりました。

最初はかなり怪しまれましたが、こちらの意図を御理解頂くと非常に分かりやすく御説明して頂けました。しかし、まとまった資料というものは無く、それぞれの市町村史を調べていくのが良いのではという御指導をいただきました。
仏像彫刻史と歴史学がリンクし多面的に見ると、なかなか面白い事が分かってきそうな気がしました。

新潟市歴史博物館ホームページ

◆2005.3.30(水)『虫害について』
 先日、自治体の文化財の担当の方に、仏像の防虫に付いて聞かれましたので、ここでまとめたいと思います。
これまで、仏像の害虫やカビを殺すのには、エキボンガスという、酸化エチレンと臭化メチルの混合気体を、使っていました。これは、オゾン層を破壊したり発ガン性があるということで、使う事ができなくなってしましました。

そこで、文化財保存科学の研究者はそれに代わる方法を考えています。脱酸素剤により酸素をなくす事で窒息死させる方法や、二酸化炭素や窒素ガスを封入して窒息死させる方法が考えられていますが、大きな文化財をどのように封入するかや、時間がかかり過ぎる、虫の卵には利かないなどの理由で、なかなか決定打は出ていません。

また、仏像の中にまでどの程度効果があるのかが分かりません。仏像の中にある酸素だけで虫はしばらく生きていけるでしょうし、薬剤や気体がどの程度中まで入っていっているかは疑問です。

仏像に散在する虫穴は虫が成虫になって出ていった穴です。虫は、幼虫の間に木を食べて成虫になると外に出て行くのです。基本的に古い木材よりも新しい木材の方がおいしいと思われますので、置く環境を良くしておけば、そんなに恐れる事はないと思います。普通のお寺のお堂なら問題は無いはずです。仏像を害虫から守る為には、湿度の高い環境に置かないというのが基本です。湿度が高いと喰いやすくなるようです。これは、腐朽菌の繁殖を抑える事にも繋がります。反対に乾燥しすぎると木が割れます。人間が生活しやすい環境がお仏像にもいいのです。

漆塗りの框座などの台座の上に置く事で湿気が上がるのを防ぐ事もできます。

また、もし、虫に喰われることがあっても、虫穴が増えてきた時点で早めの修復を行なえば、大事には至りません。虫に喰われた穴は割合、修復が利く損傷です。その後に腐朽が起ったり、彫刻表面の欠失が起ったりする事の方が怖いのです。

新しい厨子の中に入れて、ぴたっと密閉してしまうのは、湿気がこもった場合にはかえってよくない場合があります。
管理されている方は『目通し、風通し』をこころがけてください。

『文化財害虫事典』 東京文化財研究所編 クバプロ は文化財の害虫の写真がその文化財の素材別に出ていて面白いです。

◆2005.3.17(木)『作業完了?』
 
報告書を提出して、作業場の片付けをしてきました。報告書はたくさんの写真を貼付けて作るので結構手間がかかり、費用もかかりますが、修復の記念となるものなので、凝って作ります。報告書の修復前の損傷写真と修復後を見比べて、どんなに直ったかを分かって頂くためのものでもあります。これを見てもらわないと、私の苦労が分かってもらえません。結構みなさんどんなに壊れていたかを忘れてしまいますし、直したところはよーく見ないと分からないように同化させているのです。

報告書の中には、美術史の中での位置付けもなるべく分かりやすく記述します。修復は、お仏像がどのような来歴なのかを知る機会でもあります。

これで今回の仕事が完了と思いきや、4月に魂入れを行う事になりましたので、またとんぼ返りです。

◆2005.3.17(木)『神田祭り』
 毎年6月に行なわれていた文化財保存修復学会が今年はなぜか5月14・15日に行なわれることになりました。なんと神田祭りと重なってしまっています。どちらをとるか、非常に迷うところです。神田明神は今回の学会会場から歩いて行ける距離なので、少し抜け出して、祭りの雰囲気を感じてみて下さい。浅草の三社祭りとは違い、本当にそれぞれの町内の人々が神輿を上げているので、怖くありません。近づいてみて下さい。私の町内では町内の企業の方の参加も受け付けて「はっぴ」を貸します。一度担ぐと病みつきになるようです。女性の割合も多く、女性だけで担ぐ区間もあります。神田駿河台下の交差点を通行止めにして、何町内かの神輿が集まり、盛り上がったりします。是非一度その盛り上がりを体験してみて下さい。神田明神のHP

当日の道路は各所の通行止めによる渋滞が予想されますので、御注意が必要です。

◆2005.3.16(水)『管理人のページ』
 管理人のページをつくりました。

◆2005.3.14(月)『平安仏を発見』
 今日、懇意にさせて頂いている寺院に、たまたまお電話したところ、午後から新潟日報の取材の方が来て、別に管理されているお堂のお仏像を写真に撮るということで、同席させていただきました。
なにしろ12年に一回の御開帳の秘仏だそうで、取材の方が来る前に、写真が撮れるようにかたずけをお手伝いして、厨子を開けました。

御住職のお話では江戸時代くらいのお仏像とお聞きしていました。
しかし、厨子を開けてみると、なんだか雰囲気が違います。あわてて懐中電灯を車に取りに戻ってよく見ると、等身の平安仏でした。かなり古風なかたちをしていました。顔面は多少補修されていると思われ、膝前材と両腕と宝冠は江戸時代くらいに作り足されたものです。これが、お像の雰囲気を随分変えています。しかし、体幹部材は一木作りのお仏像で、彫眼、割首なし。胸と腹のかたちを凹線で表わし、耳のかたちがかなり古い部類のお仏像です。お仏像の底から観察すれば時代を確定できますが残念ながら、そこまでの観察は出来ませんでした。そのようにお話をすると、御住職もたいへん驚かれていました。私も驚きました。
このお仏像は一度調査されているようですが、その時は、何も言われなかったそうです。

◆2005.3.12(土)『遷座』
 
修復作業が全て終わり、修復後の写真を撮って、お仏像に元の場所に戻って頂きました。この三ヶ月の苦労がむくわれました。あとは報告書を作るのみです。

◆2005.3.8(火)『縁日』
 
今日は月2回(8・28日)のお薬師様の縁日の日で、何人もの方いらっしゃり、皆さんでお参りされていました。そして、ほぼ修復の完了したお薬師様を御覧になられていきました。多分けっこう喜んでいただけたと思います。
そして、御自分の体の悪い部分を撫でていかれました。心臓の悪い方は、胸を、膝の悪い方は、膝を、頭を撫でていかれる方もいました。像の表面は後補の彩色なので、触っても少しならまあしょうがないかなと、暖かい目で見守りました。最初はこわごわお参りされていた皆さんも、終盤を迎えて大分打ち解けられたようでした。それだけ恐れ多いお仏像であったようです。
お薬師様が、熱心なおばあさん方の信仰の中で生きておられるのだなと、たのもしく思えました。年2回の御開帳と火渡りもきっと賑わうことでしょう。

◆2005.3.3(木)『文化財としてみる』
 『憲法20条及び89条は政教分離原則により宗教上の組織に対して公金を支出することを禁止しており,仏像等の修理事業等に対して補助を行うことは憲法上問題となるが,そうした物件の文化財的価値,すなわち歴史上又は芸術上の価値に着目し,文化財それ自体の保護の措置として行うものであれば許されると解されている。』(文化庁ホームページより)

これによって信仰の対象物でも文化財的価値のあるものに対しては、保存の援助を差し伸べる事ができるようになりました。しかし、裏を返すと文化財指定されたもの以外には保存の援助を差し伸べる事が出来ないということになり、今回の中越地震でも公的な機関は、指定品以外の被害を受けた宗教物、信仰対象に対してなかなか援助の手を差し伸べられないというジレンマがあったそうです。文化財として見る事で公的に守る事ができるようになった宗教内の文化財が反対に、指定以外のものは、宗教物であるがために手を差し伸べられないということで、仏像という信仰の対象物を守り伝えるには様々な注意点があるのだなと感じました。

◆2005.3.1(火)『修復方法』
 油絵の修復の方とお話をする場合に一番問題になるのは、修復に使う素材についてです。油絵の修復の場合は可逆性のある素材(溶剤などで除去が可能な素材)を必ず使う事が言われています(国際的な会議で申し合わせたと授業で習った記憶があります。)が、仏像や漆工品を直す場合には漆という可逆性のないものを使用しています。

また、作品自体に使われている素材を修復素材に使わないという事も必須です。これは、修復した部分とオリジナルの部分を後々の人が区別出来るようにとの配慮なのですが、仏像の修復では、割合制作時と同じ素材、同じ技法を用いて修復する事が多いのです。

「現代の文化財としての仏像の修復法」は明治時代に現在の財団法人美術院国宝修理所の新納忠之助が岡倉天心(東京芸術大学を開いた人)の命で日本の伝統技術を応用した修復方法を研究して始めたものが元になっています。奈良近辺の古美術修理の職人さんとか仏師の伝統的な技術を集めたもののようです。「普通修理法」と呼んでいます。現在では、国立文化財研究所などの協力を得て、合成樹脂や先端技術も応用して修復を行なっていますが、国宝・重要文化財の御仏像も基本的にはこの「普通修理法」を用いて修復されています。

◆2005.2.22(月)『メールが詰まる?』
 先日からメールが受信出来なくなって困っていた。いろいろやってみたが、どうにもならなくてプロバイダに電話して教えを乞うた。すると、『データがサーバのどこかに引っ掛かって詰まっているのでは』という答えで、それを直す処置を講じたら直った。まあ、イメージ出来ないこともないのだが、どうも譜に落ちない。データというものは質量が無いし、物質でもない。どのように「引っ掛かっている」のか、見てみたいものである。

◆2005.2.21(火)『新シルクロード』
 
今日、新シルクロードを見ていた。トルファンには大学時代に研修旅行に行って、ベゼクリク千仏洞にも見学に行った。その時、剥ぎ取られた壁画を見て、西欧や日本の探検隊と称して、遺物の略奪を行なった人に憤りを感じたものであった。しかし、今回の番組によると、探検隊当人は、偶像崇拝を嫌うイスラム教徒になったウイグルの人々が壁画を破壊する危険を感じ、その危機から救う為に壁画を剥ぎ取り、保存したいという考えも持っていたという事を書き残していた。事実他に残っている壁画の顔面を削りとられているものを多数見たし、記憶に新しいところではアフガニスタンのタリバン(イスラム原理主義者)に爆破されたバーミアンの大仏もある。仏像の修復をしている身では、イスラム教はとてもこわい。

◆2005.2.5(土)『見学の方々』
 
先日の続きですが、見学に来られた町の重役の方々は、修復中の仏像を御覧になって最初は多少不審そうでした。御仏像がそんなにきれいになっていないからです。やはり一般の方の修復のイメージは御仏像がきれいに塗り上がって、新品同様になるというもののようです。しかし、修復前の写真で損傷の大きさを見て頂き、像の雰囲気をあまり変えない今回の修復の方針をお話して、納得して頂けたようでした。
 お寺の方も、螺髪の虫孔を埋め、欠失した部分を戻していくことで、かたちがしっかりしたので。『パーマ屋さんに行って来たようだ』と言われてよろこんで頂いています。修復も終盤を迎えてあともう少しです。

◆2005.2.4(金)『仏像と油絵の違い』
 今日は町の役場の重役の方々と、油絵の修復家の方が作業状況を見学にいらっしゃいました。仏像の修復をしているところを御覧になる機会はなかなか無いので、関心を持って御覧頂けました。
 この時、油絵の修復家の方からのお話が印象に残りました。油絵の場合は、オリジナルの上に、これほど後補の表面彩色が塗られている事は無いが、仏像は全体を後補の表面彩色に覆われている事が良くあるという事に驚かれていました。これは、漆工品の修復の方にも言われた事があります。なるほど、その多くが純粋芸術の油絵と、信仰対象である仏像との存立の違いに起因している問題なのでしょう。また、油絵は美術作品としてその作家の作品性が大切にされ、表面こそが構成要因です。対して、仏像は信仰の対象としての役目があり、かたちが主な構成要因です。現代の人間は仏像に美術性を見い出していますが、元々美術品とは違います。

現代の文化財の修復というような概念が無かった時代(ひと昔前まで)は、仏像修理にはオリジナル性を守るという事がさほど求められていませんでした。信仰の対象としてきれいになるという事が第一に求められていたのでした。日常生活には無い金色に光り輝く仏像に御利益を感じられていたのかもしれません。そうやって、何度も何度も修理を重ねられ、手渡されて来たからこそ仏像は今日まで伝わったのです。

この後補の表面彩色によって、覆い隠されていた、仏像の本来のかたちを取り戻すというのが仏像の修復の難しいところでもあり、面白いところでもあります。後補表面を除去する事で、仏像自体の歴史の深さを発見する事もあります。

また、今回の修復のように、信仰上の理由により、長年親しまれてきた後補表面の雰囲気を変えないようにという選択肢が生まれてくるところも仏像修復ならではです。それも、仏像の修復の難しいところでもあり、面白いところでもあります。(今回の修復では、本来のかたちを取り戻せた部分もたくさんあり、オリジナル性を出来うる限り引き出すように苦心して修復を行う事ができました。)

同じ文化財というくくりにありながらも仏像と油絵は随分違うものだなと再認識しました。

◆2005.2.1(火)『東北芸術工科大学 卒業制作展』
 
東北芸術工科大学(山形市)の卒業制作展が、2月16日(水)〜20日(日)まで、大学校舎にて行なわれます。残念ながら私のいた古典彫刻修復室(主に仏像修復)はなくなってしまいましたが、保存科学、東洋絵画修復、油彩画修復、立体修復などの分野の卒業生が研究の成果を報告していることでしょう。18日には研究発表会が行なわれるそうです。詳しくは東北芸術工科大学HPまで。

◆2005.2.1(火)『恐るべし雪国新潟』
 
新潟は、昨日からの雪が降り積もっています。学生の時に山形に住んでいたので、雪国には慣れているつもりでしたが、新潟の雪は想像以上でした。今回の大雪ではお寺の駐車場に、はまって出られなくなってしまいました。丁度居合わせた作業員さん達に押してもらって何とか脱出できましたが、雪が降ると毎日気が重いです。

また、寒い日は、漆の乾きが悪いですし、膠が固まり色を置くのも大変です。早くこの寒波が通り過ぎて欲しいものです。

◆2005.1.26(水)『昔の人の動き』
 
現在修復中の御像は阿賀野川のすぐ近くのお寺に安置されています。昔の人は移動・運搬手段に水運を利用していました。歩いたり、籠に乗ったり、馬に乗ったりするよりも沢山の荷物や人を楽に運べたからです。従って、海や川の周りに集落が栄えるようになってました。一方、現在の人間の生活は陸路が主流になってます。また、陸路にしても昔の道は、現在の鉄道や国道とは別のところを通っていたりします。そして、現代の車社会とは違い、一日で移動出来る距離も限られているので、宿場町などが必要でした。

つまり、昔の人との動き方や速度の違いによって、歴史の中におきざりにされてしまう場所が多くあるということです。
「どうしてこんな所に平安時代の仏さまが。。。」と思う事がよくありますが、これは、人の動きや経済構造が現代とは全く違うことから起ります。昔の人の動きをたどってみると非常に面白いです。

◆2005.1.26(水)『古いガラス戸』
 建築の修復の方に御会いしてきました。新潟市では、古い建築を熱心に保存活動しておられるようで、今回私が見学させて頂いたのは、江戸時代に建てられた町家でした。雪国の町家の玄関の造りは、派手にしないそうで、表玄関は地味なのですが、中は良い材料を使った素晴らしい建物でした。庭に面した廊下は全てに沢山のガラス戸(建造当初のものではないかもしれませんが、)がはめられていました。これは、畳一畳の大きさの歪みのある古いガラスを用いたもので、新潟地震やその他の災害等でも一枚も割れなかったそうです。圧延したロールの跡のあるものはよく見かけますが、ここのはまた少し違う気がしました。ガラス自体の透明度は古いものの方があるような気がしました。今の平らなガラスを通して見る景色とはまた違うものでした。
現在は持ち主の方が住んでおられるので、生活感がありますが、公開に向け何年かかけて、整備を行なうそうです。公開されるのが楽しみです。

◆2005.1.25(火)『油絵の修復』
 
先日、油絵修復をしている工房を見学させていただきました。まず、最初の印象はきれいなお部屋だなという印象でした。自然光の入る、白い壁のお部屋でした。修復家のかたも白衣を着ていて、溶剤や顔料分析等の様々な化学の知識が必要な分野なので化学の実験室のような感じでした。

油絵の修復の分野は欧米の修復理論がきちんと浸透して、一番系統だてた修復倫理が確立している分野です。また、溶剤や接着剤などの最先端の技術がたくさん導入されていますので、参考にさせて頂くことが多いです。違う分野の方とお話をさせて頂くと、仕事のヒントになる事が必ずあります。

私も大学生の時には油絵修復についての概説の授業があったので、ひと通りの工程は知っているのですが、今回のはなかなか難しい仕事だなと感心しました。直してらっしゃる画家の作品は、終戦直後のものの無い時代の弱いキャンバスの上に描かれていたり、展色材(油)が少ない絵の具を用いてマットな雰囲気を出している為に、絵の具層が脆弱であるという事で、難しい修復になっているようです。全ての絵が枠から外されて丸められていた事も損傷の原因です。

日本の油画家の作品の方が西洋よりも絵の具のきちんとした使い方を知らないので修復する場合には難しいそうです。美大の油絵科、日本画科はもっと、絵の具を使う技術を授業でやらなくてはならないとおっしゃってました。油絵の具は、油が揮発して乾くのではなく、酸化重合して乾くもので、完全に乾くまでには時間がかかりますし、黒っぽい色の方が乾きが遅い等、色によって乾く時間が違います。画家の人は、そうした事を知らないで、ただ感性で絵を描くと、将来の修復家が困り果てることになります。

◆2005.1.24(月)『東京国立博物館 親と子のギャラリー 仏像のひみつ
 
現在行なわれている『唐招提寺展』に関連して、仏像について初心者や子供にも分かりやすいやさしい解説展示が行なわれています。これを観覧して仏像に興味を持ってくれる人が増えてくれるといいです。専門的な事を分かりやすく展示されているそうです。会期中には参加費無料のギャラリートークや、ワークショップも開催されます。展覧会・講演会情報の中にも書き込みましたが詳しくは東博HPを御参照下さい。

◆2005.1.23(日)『かたちの変遷』
 
先日書き込んだ仏像の耳の形の時代による変遷の話に関連して。『仏像の見分け方』 西村公朝・飛鳥園著 新潮社とんぼの本 に時代による、目や口や耳の形の移り変わりを、写真で分かりやすく説明しているページがあります。御参考にしてみて下さい。

◆2005.1.23(日)『旭山動物園の話し』
 今日テレビで、北海道の旭山動物園のことをやっていた。年間入場者数は、東京の上野動物園よりも多いそうだ。廃園寸前まで入場者が落ち込んだ後、動物の展示の方法のアイデアを持ち寄って、動物のすごいところを見せる、『見せる』展示方法を実践し、成功した。一度行ってみたい。
これは、どんな大きな博物館、小さな資料館にも参考になる事だと思う。ただものを並べて置く展示方法や、展示会社に押し付けられた大掛かりな展示機械というのは、一度行けばもう十分で、もう一度足を運びたいと思わせる展示というのが必要になってくる。
なんにしてもこの見せ方というのが大事なのだと感心した。


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