◆◆損傷の種類◆◆ |
永い年月を経て来た仏像の損傷にはたくさんの種類があります。それぞれを見ていき、その原因を確認していきましょう。これらの損傷には人間の病気と同樣に、早めの修復が肝心です。 ◆◆損傷例の写真にリンクしているものもありますのでクリックしてみて下さい。 |
●鉄釘、鉄鎹の腐食
鉄が錆びる(酸化する)ことによって、釘が膨張して木を割ったり、周辺の木質を炭化させたります。これは放っておくと周辺に大きく広がっていきます。仏像の癌のようなものです。
●接着剤の劣化
膠は、何十年かで劣化し、部材がばらばらと外れてきます。どの部分の膠も比較的同じように劣化していきますので、一ケ所部材が外れはじめたら全体に注意が必要です。部材は脱落すると、紛失してしまう可能性が高まるので、早めに修復家に診てもらい、再接着してもらう必要があります。特に、釘を一切使わず、膠のみの接着で作られた像は要注意です。
●ねずみの害
ねずみにかじられる事で彫刻が欠失することです。
●虫食い
シバンムシ、ヒラタキクイムシ、カミキリムシなどが仏像に卵を産み付け、その幼虫によって木質が喰われ、穴をあけられること。仏像を移動する際に、虫のフンが沢山落ちてきます。表面上には分からなくても、内部で喰われている場合もありますので注意が必要です。
●木材の腐朽
褐色腐朽菌、白色腐朽菌などによって木材が腐朽すること。この菌は高温多湿の環境で繁殖しやすく、気付かないうちに内部まで進行していることがあります。像の下回りの湿気の上がり易い部分に起りやすいです。
●干割れ
木材が乾燥する事によって出来る割れのこと。木心と樹皮に近い辺材の収縮率の差により起ります。木心を含む「一木造り」の像には顕著にあらわれます。像内を刳り貫く「内刳り」の技法は一つにはこれを防ぐ意味もあります。
●彩色の剥離、剥落
彩色の膠分が劣化して像表面への固着力がなくなり、剥がれること。その段階により粉状劣化、鱗状劣化などがあります。
漆分が紫外線などによって、劣化消滅していき、塗膜の強度不足から像表面から剥がれること。錆下地、布貼りから剥がれることもあります。
下地が泥下地の場合は、彩色の剥落と同様の理由で剥がれます。
●後世の修復
後世の修復時に形状の合わない部材を補われていたり、部分的に切り取られたり、削られたりしている場合があります。
また、後補の彩色によって像本来のかたちが覆い隠されてしまっている場合も損傷に入るといえます。
●磨損
彫刻が摩滅して損なわれること。
●欠失
割損、矧ぎ目の遊離等で、部材が脱落し、紛失してしまうこと。
●亡失
持物等が紛失すること。
●割損
材が割れて、遊離すること。
●打損
衝撃によって出来る打ち傷。
●矧ぎ目遊離
接着剤・釘が、劣化腐食して、矧ぎ目が開くこと。
●脱落
接着剤・釘が、劣化腐食して、部材が矧ぎ目から外れること。
●ほこり・すす
長年でたまった、ほこり・すすが固化し、像表面を汚していること。
●人間の不注意
ぶつかったり、落としたりという人間の不注意によって像が損傷する事もあります。取り扱いの際は細心の注意を。
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