厨子入り釈迦如来坐像   江戸時代初期

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埼玉県 鴻巣市の寺院(真言宗)         

損傷の状態
  • 長年のほこり、煤により表面が汚れていた。
  • 像の鼻、口、耳朶、右手指先、裳先の一部が欠失していた。
  • 光背周縁部分の約三分の二が欠失していた。
  • 蓮肉の蓮弁が遊離し、下に落ちており、39枚が欠失していた。
  • 厨子の底面の材が欠失していた。
  • 厨子隅足が2材欠失しており、安定を欠いていた。
  • 台座、厨子のいたるところがネズミにかじられ欠失していた。
修復基本方針
  • 塗り替えは一切行わずに、クリーニングにより造立当初 の金の輝き、文様を取り戻した。
  • 像の経て来た歴史、造像当初のオリジナル部分を尊重した修復を行なった。
  • 像、光背、厨子は、基本的に解体は行なわずに、損傷箇所のみを修復した。
  • 台座は容易に外れる部分のみを解体し修復を行なった。

施工内容

  • 剥落止め
    剥離している漆塗膜を剥落止めした。
  • クリーニング
    表面の煤による汚れを薬剤、お湯を用いて丹念に除去した。
  • 補修
    虫穴、小欠失箇所、ひび割れ、矧ぎ目等は漆木屎を用いて補修を行った。
  • 新補
    欠失部分を桧材にて新補した。
     像:耳朶、指先、裳先の一部
     台座:蓮弁39枚、蕊の一部、華板の一部、隅足の一部
     光背:欠失部分(約3分の2)
     厨子:隅足(2材)、底板
  • 漆塗り
    新補した部分に泥下地もしくは漆下地を施し、漆塗りを施した。
  • 漆箔
    光背の新補・補修部分、台座補修部分には漆で金箔を貼った。
  • 組み立て
    それぞれの部材を組み立て、接着剤にて接着した。
  • 色合わせ
    全ての補修箇所のみに、周辺と違和感の無いよう、顔料を用いて色を合わせ、補修箇所を目立たなくした。


所見

 光背は、江戸初期の手の込んだ透かし彫り光背である。また、台座自体もきちんとした決まりにのっとっており、小像ながら正統な仏師により作られたものと考えられる。


◆修復後記
 厨子はススによる汚れを薬剤で除去すると、金具の金色まで甦りました。
大変だったのは光背の欠失部分と台座の連弁を補う事でした。

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