木造阿弥陀如来立像
江戸時代 
  総高120.5cm  像高60.3cm

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岩手県 奥州市の寺院(浄土真宗)           


●修復前後  









●解体写真



主な損傷の状態
[像本体] 
 ・表面膠下地漆箔の剥離・剥落。
 ・両手先・両足先、足ホゾの遊離。
 ・両袖口、両足ホゾの小欠失。
[台座]
 ・表面漆箔の欠失・剥離。
 ・ネズミによる咬害。
 ・接着剤の経年劣化による矧ぎ目の緩み。
 ・後世の修理時使用の鉄釘の腐食。
[光背]
 ・接着剤(膠)の経年劣化による矧ぎ目の緩み ・頭光鏡の錆。
 ・頭光光線の折れ、欠失(4本)。
修復基本方針
・像の造像当初の彫刻形状を生かした、歴史を尊重 した修復を行う。塗り直しなどの安易な修理方法 は一切とらなかった。胸のしみ(涙の跡)は残 した。
 ・台座のネズミの咬害は大きな欠失のみを補う予定 であったが、部分的に欠失を残しておくと欠落感 が大きく、全ての形状欠失部を補修することとし た。

主な施工内容

[本体]
・クリーニング
 表面のスス汚れを水や薬剤で除去した。
・剥落止め@
 膠下地を強化するために膠水溶液を数回塗布して 強化した。

剥落止めA
 剥落のおそれのある漆塗膜を膠とコテを用いて剥 落止めした。
部分解体
 手先、足先、足ホゾ、光背の全て、台座の全てを 解体した。

鉄釘除去
 鉄釘は錆びて木質を傷めるためこれを全て除去し た。

釘穴補修
 釘を抜いた穴に桧棒を挿入接着して、釘を打つ時 に再利用した。

接合
 接着剤とステンレス釘を併用して組み立てた。
補修・矧ぎ目処理
 小欠失箇所と部材の矧ぎ目に漆木屎(漆+小麦粉 +木粉)を用いて補修を行った。

鏡錆除去
 
鏡の錆を研磨剤を用いて除去した。
新補
 欠失部分(両袖口、両足ホゾ、台座反花)をヒノ キ材にて新補した。光背光線4本を竹材にて新 補し、漆塗り漆箔を施した。
修復銘札納入
 台座内部に今回の修復の記録として桧板に墨書し ていただいた修復銘札を納入した。

色あわせ
 補修した部分にのみ色を置き、周囲と違和感のな いようにした。 

 

◆修復後記
 台座内部には、江戸期、明治20年(1887)、大正5年(1916)、昭和14年(1939)の墨書が残されており、その時代時代で地域の様々な人が関わり修理が行われつつ御像が伝えられてきたことが分かった。


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