像の概要(修復後)
一木造り(センなどの広葉樹か)内刳りなし。頭部に仏面1と頭上面11面を付ける。彫眼。右前腕材に一材、指と付け根にそれぞれ一材を寄せる。左前腕2材、手先別材、指先に2材を寄せる。右天衣は4材、左天衣は2材を寄せる。両足先別材。像底面ホゾ穴は丸ホゾ穴であるが、外に出ている部分は現状角ホゾ。持物化瓶は2材よりなり、蓮華は4材よりなる。胸飾りは銅製。
表面は、頭上面膠下地漆箔。肉身部、条帛は漆下地色。裙、天衣は彩色。化瓶、未開蓮は漆下地漆箔。
- 主な損傷の状態
- ・長年のほこりにより表面が汚れていた。
・像足元が木材腐朽菌により腐朽していた。
・虫食孔が散在していた。(特に足元・背面に多かった)
・顔面などの肉身部が、後補の表面処理によって造像 当初の像容が害されていた。
・いたるところで彫刻形状が欠失していた。
・後世の修理時の後補部材の形状が合わず、像容を害 していた。
・右腕材が腐朽し、彫刻表面が欠失していた。
・両腕、両手先の矧ぎ目が遊離していた。
・後補の台座の天板がたわみ、足ホゾの長さに比べ薄 い為に、構造的に像の安定を保てていなかった。
・部材の接合に使われている、鉄釘は錆び、膠は経年 劣化して、このまま放置すれば、次々と部材は脱落す る恐れがあった。
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[台座]
・長年のほこりにより表面が汚れていた。
・表面彩色が膠の経年劣化によって、剥落していた。
・天板が像の重量を支えきれず、中央で沈み込んでい た。
・ホゾ孔の深さが、天板の厚み(2cm程度)しかなく、像 を固定するには浅すぎ、中越地震の際に、像本体が 後ろに傾いたものと推定された。
・正面の流木が虫食い、腐朽を被っていた。
- [光背]
・鉄釘、膠の劣化によって、矧ぎ目が遊離していた。
・表面彩色が膠の劣化によって剥落していた。
・後世の修理に施された紙貼りが剥がれ浮いていた。
\ 修復工程
・赤外線観察
赤外線カメラで観察した結果、像背面より墨書が発見され た。
・後補表面除去
顔面や肉身部の後補表面処理を除去すべきか検討した 結果、下の彫刻表面の強度も充分にあり、除去が可能と 判断した。後補の表面処理で除去することで、像のオリジ ナリティーを回復できると考え、除去を行った。膠下地を 綿棒などに水分を含ませ、丹念に除去した。
・剥落止め
像下半身の表面彩色に剥落止めをした。
・解体
全ての部材を一旦解体した。
・鉄釘除去
鉄釘・鎹は、錆びて膨らみ材を割り、木材を炭化させる癌 のようなもので事から、これを全て除去した。
・釘穴補修
釘穴を再利用するものは、木釘を挿入して補修した。
・解体写真
部材を並べて解体した状況を写真に記録した。
・樹脂含浸強化
合成樹脂を用いて、腐朽箇所を、含浸強化した。(彫刻表 面には濡れ色を出さないよう注意した)
・虫食孔強化
虫食孔に合成樹脂を注入し、彫刻表面を強化した。
・虫食孔補修
虫食孔に漆木屎(漆+小麦粉+木粉)を用いて充填整形 し補修した。
・小欠失箇所補修
小欠失箇所に漆木屎を用いて補修を行った。特に右前腕 は彫刻表面全 てが腐朽によって失われていたため、全 てを補った。
・欠失箇所新補
大きな欠失箇所と後補部材で使用に耐えない部材を、ヒ ノキ材を彫出して、新しく補った。(右耳朶、化仏1面、右 手指5指、左手第2指、右天衣上部)
・後補部材の補正
使用に耐えられると考えた後補部材は、出来るだけ使用 し、形状の補正の必要のあるものは切削補正した。(長す ぎる左腕は切り縮め、右足先は左足先に形状をそろえた 、持物の形状を補正した。)
・組み立て
接着剤、ステンレス釘を併用して組み立てた。
・矧ぎ目処理
部材同士の矧ぎ目(つなぎ目)に漆木屎を充填整形して、 部材の形状を連続させた。
・補彩
補修部分にのみに周囲と違和感のないよう、顔料などを 用いて補彩を施した。
[光背]
・表面紙貼り除去
後世修理時に貼られた紙貼りが、浮いた状態で張られ非 常に良くない状態であったことからこれを除去した。
・剥落止め
表面彩色全体の剥落を止めた。
・解体
全ての部材を一旦解体した。
・鉄釘除去
鉄釘は、錆びて膨らみ材を割り、木材を炭化させる事から、これを全て除去した。
・釘穴補修
釘穴を再利用するものは、木釘を挿入して補修した。
・組み立て
接着剤とステンレス釘を併用して組み立てた。
・矧ぎ目処理・補修
矧ぎ目と小欠失箇所を漆木屎を用いて補修を行った。
・補彩
像を拝観すしやすいよう、顔料などで全体に補彩を施した。
[台座]
・剥落止め
表面彩色全体の剥落を止めた。
・樹脂含浸強化
腐朽して脆弱化した箇所に、合成樹脂を含浸し強化した。
・補修
小欠失箇所、矧ぎ目に漆木屎を用いて補修した。
・構造強化
天板が沈み、像の安定を欠いていたので、台座内部に構 造材を設けて構造を安定させた。
・補彩
補修箇所に色を置き、目立たなくした。
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