木造僧形文殊菩薩坐像 永正15年(1518年 室町時代)     

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新潟県 五泉市の寺院(曹洞宗)         


    正面修復前         正面修復後


    像底修復前        像底修復後

部分


    顔面修復前        顔面修復後


    体部修復前        体部修復後

赤外線調査          
         
自然光観察


          赤外線観察

損傷の状態

  • 長年のほこり、煤により表面が汚れていた。
  • 体幹部に、虫穴が散在していた。
  • 体幹部部材の矧ぎ目にひび割れが走っていた。
  • 裾先、耳などが欠失していた。
  • 台座が欠失し、像の安置が不安定であった。
修復基本方針
  • 塗り替えは一切行わずに、クリーニングにより造立当初 の金の輝き、文様を取り戻した。
  • 像表面は後補であると考えられるが、今回の修復ではこれを除去しない。
  • 像表面の汚れを除去し、虫穴や欠失箇所を補修し形状の復元を行なう。
  • 像の部材は、後補の麦漆にて接着されており、構造的に十分強度があり、修復に際して解体は行う必要はないと考えられた。

施工内容

  • 剥落止め
    剥離している漆塗膜を剥落止めした。
  • 構造強化
    像内部の欠失箇所を桧材にて復元し、構造を強化した。
  • 補修
    虫穴、小欠失箇所、ひび割れに漆木屎を充填整形し、補修を行なった。
  • クリーニング
    表面の煤による汚れを薬剤を用いて丹念に除去し、金の輝きを取り戻した。
  • 新補
    欠失していた裾先、耳等は桧材にて新しく補なった。
  • 塗膜補修 
    漆塗膜の欠失した部分は漆錆下地で補修した。
  • 色合わせ
    全ての補修箇所に、周辺と違和感の無いよう顔料を用いて色を合わせた。
  • 台座新補
    欠失している台座を新しく桧材を用いて補い、像の安置を安定させた。新補した台座に漆及び顔料を用いて表面処理を行った。
墨書

 赤外線調査によって、永正15年(1518年 室町時代)の墨書が発見された。
 寺院の名前、聖僧、檀那、道三 などの文字が確認された。これは、像造立の際に書かれたものと断定した。
この墨書は、自然光下では全く確認出来ず、赤外線観察によってのみ発見する事ができた。

所見

 彫眼。体幹部材は前後割り矧ぎ。割首なし。体幹部前面材地付きに心束を残し、前後材の接点を像底付近に残すなど、古風な構造を有していた。また、前後材の接点の構造、耳の形状などより院派仏師の作と断定された。

修復後記

墨書は肉眼で見ても全く確認が出来ない状態でしたが、、赤外線カメラで観察するとくっきりと見えました。
私自身、室町時代の終わり頃の造像と推測していた事が、裏付けられてとても良かったです。
現在の建物よりも古い時代のお像の発見によって、寺院の歴史が紐解かれました。ご住職様にもとても喜んで頂けました。


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