銅造十一面観音立像 【市指定有形文化財】
15世紀か 像高 85.3 重量 28kg
福島県のお寺(真言宗)
●修復前
●修復後
[本体]
宝髻を結う。頭上に7面のみを残した、頂上面、化仏、菩薩面(菩薩面2、瞋怒面2、狗牙上出面1)を戴く。地髪毛筋彫り。耳朶環状。左手は屈臂して胸前に上げ、掌を右に五指を捻じ水瓶を執る。右手は垂下して軽くまげ、第一指を屈して余指を伸ばす。条帛、裙(折り返し付き)を着ける。台座上に立つ。
[台座]
蓮華座。蓮弁を魚鱗葺きにする。
[ 構造・技法
[本体]
宝髻より頭体を通して、両足ホゾまで一鋳とし、中型(なかご)は、像内全体に及ぶ。左腕は持物まで、右腕は指先までそれぞれ一鋳とし、肩部に蟻ホゾで矧ぐ。頭上の面は、各木造で、首ホゾまで一材で彫出しホゾ挿しとする。(7面が残る)
[台座]
木造。蓮肉1材。蓮弁を葺く。
\ 損傷状況・後補箇所
●損傷状況
[本体]
・東日本大震災により仏面が脱落し、?が折れてしまった。
・彫刻表面の欠けや潰れがあった。
・左肩の接合がズレていた。
・欠失箇所があった。
[台座]
・蓮肉より下が亡失していて、安定を欠いていた。
●後補箇所
木製の仏面。台座。
] 所見
・鹿嶋神社の別当寺である鹿王山最勝寺(明治6年3月廃寺)観音堂の本尊として伝来。やや面長な顔貌はすっきりとあらわされ、体躯は下半身に量感をもたせ、腰部が厚く、そこにかかる衣文は、重々しく表現されている。その造立は、15世紀に入るものと考えられる。
・仏面、台座は木製で、後世に補われたものと考える。仏面の形状を見ると、本像の為に作られたものではなく、他像より転用されたものとも考えられる。
・台座が木製で、蓮肉より下が亡失してしまっており、御像が重く、重心が上にあり、地震による振動によって倒れ易くなっていたと推定される。また、足?の?穴が緩く、固定出来ていなかった。
]T 修復基本方針
●像の造像当初の彫刻形状、歴史を尊重した修復を行った。塗り直しなどの安易な修理方法はとらない。
[本体]
・仏面の彫刻の欠失(頂上仏の耳朶や菩薩面の髻の一部など)は、今回の
・化仏は、抜き差し出来るようにとのことで、接着は行わなかった。
[台座]
・蓮肉より心棒を通し、合板にて仮の框座を新補して、御像を安定させた。
]U 修復工程
[本体]
1.搬出
厳重に梱包して搬出した。
2.修復前写真撮影
修復前の記録として損傷状態を写真に記録した。
3.接合
欠片を元の部分に接合した。
4.新補
大きな欠失箇所はヒノキ材を彫出して補った。(耳朶、髻の一部など)
5.形状補修
漆木屎[漆+小麦粉+木粉]を用いて、小欠失箇所を補修した。震災の損傷箇所以外にも行った。
6.色合わせ
補修部分にのみ、漆錆[漆+砥の粉]や水干絵具を用いて、色を置き、
7.完成写真
完成した状態を写真に記録した。
8.報告書作成
修復前後、損傷写真、作業写真を用いた修復報告書を作成した。
9.搬入
厳重に梱包して搬出した。
10.足ホゾ穴補修
台座足ホゾ穴にヒノキ材を挿入し、足?が効くようにした。
11.台座框新補
現状の蓮台だけでは、重い御像の安定は難しいと考え、合板によって仮
本修復事業は、東日本大震災による被害の復興事業として、搬出・搬入に関わる交通費を「仏像文化財保存サポート 地域歴史文化財保存支援」より援助し行わせていただきました。
◆修復後記
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