木造菩薩坐像の修復
高285.5cm
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福島県の寺院(真言宗)
修復前


●修復後



●補修状況

   
W 形状
 [
本体]
  
髻を結い上げる。地髪疎ら彫り。白毫相はあらわさない。耳朶貫かず。三道相をあらわす。8臂。左真手は、屈臂し掌を上に五指を軽く握り持物(宝珠)を執る。右真手は右腿の上で掌を左に五指を捻じて持物(現状亡失:宝剣か)を執る。左右にそれぞれ脇手3本ずつ配す。着物を左前に打ち合わせる。沓を履く。右足を上に結跏趺坐する。

 [
台座]
  
背もたれのある畳座。

X 品質・構造
[
本体]
 
木造寄木造り(頭部:ケヤキ材。躰部:針葉樹材)。頭部は元々は前後割り矧ぎ、割首の古風な構造。躰部は前後に材を寄せ、両肩より体側材、両脚部を寄せ、両裳先、両袖先、両手先を寄せる。脇手は肘より2材を寄せる。表面膠下地彩色。宝珠漆箔。

[台座]
木造(針葉樹材)。表面膠下地彩色、漆塗り。

Y 損傷状況
[
本体]

 ・後頭部と脇手上腕の部材の亡失。
 ・脇手の脱落。
 ・表面彩色の脆弱化、剥離、剥落。

[
台座]
 ・表面彩色の脆弱化、剥離、剥落。
 ・漆塗膜の剥離、剥落。
 ・蕨手状の飾りの亡失。

Z 所見
 ・頭部は鎌倉時代後期から室町時代前期の菩薩像、躰部は江戸時代後期の弁才天坐像、台座は江戸時代(寛延四年=1741)の肖像彫刻のもの。それぞれ来歴の違う部材の集まりではあるが、長くこの状態で伝世されてきたことを尊重して、修復を行った。

[ 修復基本方針
 ・塗り直しなどの安易な修理は行わず、現状の状態を保持し、信仰の対象としての威厳を取り戻す処置を行った。
 ・基本的な構造は保たれており、全解体は行わずに、内側からの補強を行って修復を行った。

\ 修復工程
1.搬出 

  御像を薄葉紙、紙座布団で損傷しないよう厳重に梱包した後、搬出を行った。
2.修復前写真撮影    
  修復前の記録として、龍全体と損傷箇所を写真におさめた。
3.構造強化
  像本体は像底や胎内から、矧目に合成樹脂を注入して構造を強化した。台座は内部に構造材を接合し、構造を強化した。
4.部分解体
  
容易に外れてしまう部材のみを解体した。
5.剥落止め@
  表面の彩色塗膜の強化を膠水溶液を数回塗布し行った。
6.剥落止めA
  漆塗膜の剥落止めを膠水溶液と電気コテを使用して行った。
7.接合
  エポキシ樹脂系接着剤、錆びないステンレス釘などを併用して接合を行った。
8.新補
  後頭部と、上腕部、台座蕨手状の飾りの亡失してしまった部材をヒ
  ノキ材にて新補した。
9.補修
  矧目や小欠失箇所を漆木屎(漆+小麦粉+木粉)を用いて補修した。
10
.下地
  補修・新補部分にのみ下地を施した。
11.
漆塗り
  
框部分の漆の剥落部分の塗膜は復元を行った。
12
.色合わせ

  補修・新補部分にのみ色を置き、周辺と違和感のないようにした。
13
.修復銘札
  今回の修復の記録として、胎内に修復年月日・お寺・ご住職様のお名前などをヒノキ板に墨書していただいたものを修復銘札として納入した。
14
.修復完成写真
  修復後の状態を写真に記録した。
15
.報告書作成
  写真を使用した詳細な報告書を作成した。
16
.搬入
  御像を薄葉紙、紙座布団で損傷しないよう厳重に梱包し搬送を行った。
17
.安置
  修復作業についてご説明した後、安置した。

 
  

◆修復後記
・頭と体と台座がそれぞれ別時代のものだったが、長くこの状態でお祀りされており、この状態でまとめることとした。


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