木造阿弥陀如来立像
江戸時代　　像高　　　３８．４

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東京都の個人蔵

●修復前後

台座解体

 �X　形状
［本体］
　　肉髻。肉髻珠。螺髪螺旋型。白毫。耳朶環状。三道相をあらわす。左手は垂下し、掌を正面に第１・２指を捻じる。右手は屈臂し、掌を正面に第１・２指を捻じる（来迎印を結ぶ）。覆肩衣、衲衣、裙を着ける（覆肩衣を右腹前でたるませ衲衣にたくしこむ。衲衣は偏袒右肩に着け、左胸前で衲衣の初層を上層に懸ける。）台座上に立つ。

　[台座]　
　　　蓮華座：蓮肉。蓮弁魚鱗葺き。敷茄子（牡丹の彫刻）。華盤�@。蕊。華盤�A。反花。框。

�Y　構造・技法
　［本体］
　　木造寄木造り（ヒノキ材）。内刳りあり。玉眼嵌入。
頭体幹部は耳前で前後に剥ぎ寄せる。両肩より剥ぎ寄せる。両手先差し込み剥ぎ。両足先、両足?別材。肉髻珠、白毫水晶製。膠下地漆箔。

　　[台座]
　　木造（ヒノキ材）。蓮肉（一材）。蓮弁（魚鱗に葺く）。敷茄子（一材）。華盤�@（六材を寄せ、下部に板材を寄せる）。蕊（六材）。華盤�A（六材）。反花（六材）。框（六材）。心棒を通す。膠下地漆塗り漆箔。

�Z　損傷状況・後補箇所
●損傷状況
［本体］
　・左手首に亀裂が入り、第３指先欠失していた。
　・左手首周辺に補修の痕があった。
　・右手先が後補で像容に合わない。
　・顔面材矧目が頭部で遊離していた。
　・両足先、左足?が遊離していた。

［台座］
　・蓮弁表面の後補の塗膜が、剥離、剥落していた。
　・矧目が見えて、遊離している箇所があった。
　・長年のホコリ、ススによって汚れていた。
　・台座の蕊、華盤、反花は以前に、木工用ボンドで接着が行われていたが、形状のズレがみとめられた。
　・部材の亡失（蕊3材。華盤�A1材）があった。
　・後補の蓮弁で使用に耐えられないものが多数あった。
　・框が亡失していた。

●後補箇所
　[本体]
　　右手先。

　[台座]
　　敷茄子より下の段。

�[　修復基本方針
　・像の造像当初の彫刻形状、歴史を尊重した修復を行う。塗り直しなどの安易な修理方法はとらない。
　・現状の雰囲気を残した修復を行う。
　・光背は補わない。
　・蓮弁の解体を行う。後補の蓮弁は使用に耐えないため、新しく補うこととした。

[本体]
　・右手は像容にあってはいないが、矧目の遊離もないのでそのままとする。

[台座]
　・台座の蓮弁の後補の塗膜を除去し、当初の蓮弁の造形を取り戻す。
　・蕊、華盤�A、反花は一旦解体する。
　・框を補う。

�\　修復工程
　[本体]
　　１．搬出
　　　　　薄葉紙、紙座布団などで梱包し搬出した。
　　２．修復前写真撮影
　　　　　修復前の状態を写真に記録した。
　　３．樹脂注入
　　　　　頭部の矧目にアクリル樹脂を注入して強化した。
　　４．部分解体
　　　　　部分解体を行った。（左手先、左袖、両足先、左足?）
　　５．クリーニング
　　　　　薬剤なども用いて、像表面の長年のホコリ・ススを除去した。後世の補修の錆漆（左袖先）を除去した。
　　６．解体写真撮影
　　　　　解体した状態を写真に記録した。
　　７．新補
　　　　　左手先第３指、左袖の一部をヒノキ材を彫出し新補した。
　　８．組み立て
　　　　　エポキシ系接着剤を用いて組み立てた。
　　９．矧目塗処理
　　　　　漆木屎(漆＋小麦粉＋木粉)を用いて部材の矧目を補修した。
　　10．下地塗り
　　　　　新補、補修箇所に下地を塗布した。
　　11．漆塗り
　　　　　下地を施した部分に塗り漆を塗った。
　　12．漆箔
　　　　　漆箔すべき部分に金箔を貼った。
　　13．色合わせ
　　　　　補修した部分にのみ、周囲と違和感のないよう、水干絵具を用いて色を合わせた。
　　14．修復完成写真
　　　　　修復が完成した状態を写真に記録した。
　　15．修復報告書作成
　　　　　修復前後や損傷状況、修復作業の写真を使用した修復報告書を作成した。
　　16．修復銘札納入
　　　　　今回の修復の記録として、像名、修復年月日、所有者様名、修復工房名などを記入した像修復銘札を台座内部に納入した。
　　17．修復概要の説明
　　　　　修復概要のご説明を行った。

[台座]
　１．解体
　　　　全ての部材を解体した。
　２．後補塗膜除去
　　　　蓮肉、蓮弁の後世の塗り直しの塗膜を除去した。
　３．クリーニング
　　　　薬剤などを用いて、像表面の長年のホコリ・ススを除去した。
　４．下地強化
　　　　膠下地に膠水溶液を含浸し強化した。
　５．解体写真撮影
　　　　解体した状態を写真に記録した。
　６．組み立て�@
　　　　各段ごとにエポキシ系接着剤を用いて組み立てた。
　７．新補
　　　　亡失していた、蕊2材、華盤�A1材ヒノキ材にて新補した。使用に耐えられない後補の蓮弁は、ヒノキ材にて新補した。ホゾ穴を狭めホゾが効くようにした。
　８．矧目処理
　　　　漆木屎(漆＋小麦粉＋木粉)を用いて部材の矧目を補修した。
　９．小欠失部補修
　　　　漆木屎を用いて小欠失箇所を補修した。
　10．下地補修
　　　　表面漆塗膜が欠失している箇所に、膠下地を用いて補修した。
　11．漆塗り
　　　　下地を施した部分に塗り漆を塗った。
　12．漆箔　
　　　　金箔を補うべき部分に金箔を補った。
　13．組み立て�A
　　　　蓮弁と各段を組み立てた。
　14．框新補
　　　　框をヒノキ材を用いて新した。
　15．框下地
　　　　框の表面に漆下地を施した。
　16．框松煙仕上げ
　　　　弁柄漆を塗り仕上げた。
　17．補彩
　　　　補修部分にのみ色を置き、周囲と違和感のないようにした。

�]　修復所見
　　・頭部の形状、螺髪の彫り緻密さ、袖の薄さ、服制や衣文、台座の蓮弁の形状などに古様を感じる。江戸初期に制作されたと推定する。
　　・台座の敷茄子より下は、別の御像のものと推定する。
　　・像高３９ｃｍという小さな御像であるが、非常に緻密に制作されている。
　　・蓮弁は後世のものが多く入っており使用に耐えないため11枚を新補した。

◆修復後記

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