木造阿弥陀如来立像
江戸時代後期
  総高122.0cm   像高59.1cm

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岩手県 奥州市の寺院 (浄土真宗)           


     修復前            修復後











台座解体写真


             
主な損傷の状態
[像本体]
 
・表面のホコリ・ススによる汚れ。
 ・表面漆塗り膜の剥離・剥落。
 ・両袖口、両指先の欠失。
 ・地震による落下時の顔面への損傷(修復を行わ  ない)
 ・足ホゾがないために安置が不安定。
[台座]
 
・表面のホコリ・ススによる汚れ。
 ・表面漆塗膜の剥離・剥落。
 ・部材間の結合の脆弱化。
[光背]  
 
・光線の欠失。(24本) 
修復基本方針
・像の造像当初の彫刻形状を生かした、歴史を尊重 した修復を行う。塗り直しなどの安易な修理方法 は一切とらなかった。
・顔面の損傷は地震の記録としてそのまま残した。

主な施工内容
剥落止め@
 全体の膠下地の強化を行うために膠水溶液を数回 塗布した。
剥落止めA
 表面の漆塗膜を膠とコテを用いて剥落止めした。

クリーニング
 表面のスス汚れを除去した。

新補
 欠失した指先、袖口をヒノキ材を用いて新補した 。また、手先の接合を強固にするために元の部 分に材を足した。
台座解体
 台座の全ての部材を解体した。

解体写真
 解体した様子を写真に記録した。

台座の組み立て
 台座の部材間を接着剤やステンレス釘、ダボなどを併用して組み立てた。
矧ぎ目、小欠失箇所補修
 矧ぎ目と小欠失箇所を漆木屎を用いて補修した。(右袖先、右足先、台座蓮弁、框など)
ホゾ新補
 丸ホゾにて台座と接合し、像の安定をはかった。・光線の新補
 頭光の光線24本を竹材にて新補し、漆塗り漆箔 を施した。

色あわせ
 補修した部分にのみ色を置き、周囲と違和感のな いようにした。
修復銘札納入
 今回修復の記録として桧板に墨書していただいた 修復銘札を光背背面に取り付けた。

◆修復後記
・足ホゾがなく、台座にそのまま立っていたために、2008年に発生した岩手宮城内陸地震によって転倒してしまった。

・地震によってお顔に着いた傷は、ご住職様との協議の中で、地震の記録として残したままにすることにした。こういう修復方針も興味深かった。


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