木造空也上人立像 
室町後期
  総高77.3cm 像高62.0

HOME修復例仏像の修復→木造空也上人立像の修復

新潟県の寺院 (天台宗)           

●修復前




●解体写真





●修復後

像の概要
木造(カツラ材)一木造り。彫眼。内刳りは施さない。両手袖に数材を寄せる、両手先、両脛より先を寄せる。本体表面現状錆下地。持物の鹿杖の鹿角は別材、木造漆箔。首から針金で懸けた金鼓は木造漆箔。撞木別材(新補)。 


損傷状態
[本体]
 ・像全面に虫食いによる穴が開いていた。 ・表面が長年のホコリ・ススによって汚れ  ていた。
 ・虫食いによって皮一枚になってしまって  いる箇所があった。
 ・木材の腐朽が始まっている箇所があった  。
 ・彫刻表面の弱っている箇所があった。
 ・形状の欠失した箇所があった。
 ・背面に大きな割れがあった。
 ・持物の撞木が亡失していた。
[台座]
 ・接着剤の膠の劣化によって矧ぎ目の遊離  が起こっていた。 
 ・岩の欠失部分があった。
 ・漆塗膜の剥落部分があった。
 ・彩色表面が脆弱化していた。

修復基本方針
 ・像の造像当初の彫刻形状を生かした、歴  史を尊重した修復を行った。塗り直しな  どの安易な修理方法は一切とらなかった  。
 ・虫穴を一つ一つ補修し、造像当初の形状  を取り戻した。
 ・両袖先、両手先、両足、台座は後補部材  ではあるが、形状もよく造られており、  使用することとした。
 ・撞木を新補した。

主な施工内容
[本体]
・清掃
 表面のホコリと虫穴内部の虫糞を除去した 。
殺虫処置
 蒸散性の殺虫剤とともに、4ヶ月封入し、 害虫を駆除した。
彫刻表面の強化
 彫刻表面の強化の為に、膠水溶液を 塗布 した。
樹脂含浸
 木質の強度がなくなっている箇所(脛部分 や背面虫損部分など)に、合成樹脂溶液を 含浸し、強化した。
樹脂注入
 全ての虫穴からアクリル系樹脂溶液を皮下 注入し、虫穴内部や内部の空隙を充填し、 皮一枚になっている部分を強化した。
虫穴充填整形
 虫穴を漆木屎(漆+小麦粉+木粉)にて2 段階の作業で充填整形した。
解体
 部材を一旦解体した。
解体写真撮影
 解体した状態を写真に記録した。
組み立て
 接着剤とステンレス釘を併用し、接合を行 った。
矧ぎ目補修
 漆木屎を用いて2段階の作業で材の矧ぎ目 を充填整形した。
小欠失箇所補修
 小欠失箇所に漆木屎を用いて2段階の作業 で補修を行った。
修復銘札作成
 今回の修復の記録として、桧板に墨書して 頂いた修復銘札を台座内部に納入した。
新補
 亡失していた撞木を新補した。
補彩
 補修部分にのみ周囲と違和感のないよう、 顔料や漆錆(漆+砥の粉)などを用いて補 彩を施した。  

[台座](本体と同工程は省略)
クリーニング
 表面のスス汚れを薬剤にて除去した。
剥落止め
 岩座表面彩色、漆塗り部分の剥離を膠水溶 液を用いて止めた。
解体
 全ての部材を一旦解体した。
解体写真撮影
 解体した様子を写真に記録した。
組み立て
 接着剤と錆びないステンレス釘を併用し、 接合を行った。
新補
 欠失した岩部分をヒノキ材にて新補した。矧ぎ目処理
 漆木屎を用いて部材の矧ぎ目を補修した。下地
 補修部分に下地を施した。
漆塗り
 補修部分に漆を塗った。
漆箔
 必要な箇所に漆箔を施した。
補彩
 補修・新補部分にのみ周囲と違和感のない よう、顔料や漆などを用いて補彩を施した 。

 

 

◆修復後記
非常に雰囲気のある顔の表情をしている。虫穴が沢山あいていたが、一つ一つ埋めていくと、造形が蘇った。
両足は後世に挿げ替えられていた。


もどる
このサイトの御意見・御感想は、butuzou★syuuhuku.com
                       (★を@に変えて送信下さい)まで

HOME :http://syuuhuku.com