木造台座 
江戸時代 高21.5 幅76.6 奥64.0

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福島県の寺院(真言宗) 

指定文化財の平安中期の御像が載っている、江戸時代に後補された台座です。
かなり重い像をこれまでよく支えてくれていました。


●修復前



●解体


●修復後

 

X 形状
 [台座]
  框座。中心に宝輪、宝相華文。

Y 品質・構造
 [台座]
  木造(ヒノキ材)。膠下地漆塗り、一部朱漆塗り、一部漆箔。

Z 損傷状況
 ●損傷状況
 [台座]
  ・接着剤の膠の経年劣化、後世の鉄釘の腐食。木釘の折損による構造の脆弱化。
  ・長年のホコリ、ススによる汚れ。
  ・漆塗膜の剥離・剥落。

[ 所見
  ・明治以降に打たれた鉄釘が腐食し、切れている部分があり、構造を保てなくなっていた。
  ・修復前は、一か所の釘が効いているためになんとか御像を載せることは可能であったが、他の釘と同様に腐食は進んでおり、安置に不安があった。
  ・台座の制作は江戸時代と考える。御像に比して、小さ目であることから元々本像のものではないとも考えられるが、その小ささによって、荷重を直接支える事が出来ていた。
  ・背面板は当初から無く、湿気が籠らない構造になっており、御像の保存に寄与してきたと考える。

\ 修復基本方針
  ・歴史を尊重した文化財としての修復を行った。安易な塗り直し修理は行わなかった。
  ・全ての部材を一旦解体して組み直し、安心して御像の安置を行えるようにした。
  ・像本体との調和を考え、表面の漆塗膜の復元は必要最小限に留め、現状維持修復を基本とした。
  ・内部に補強材を設け、重量のある御像を支えられるようにした。

] 修復工程
 1.搬出
    薄葉紙、紙座布団などを使用して厳重に梱包して搬出した。
 2.修復前写真撮影
    修復前の状態を写真に記録した。
 3.解体
    全ての部材を一旦解体した。
 4.剥落止め@
    膠下地に膠を含浸し強化した。
 5.剥落止めA
    剥離している漆塗膜を、膠水溶液と電気コテを使用して剥落止めした。
 6.鉄釘除去
    鉄釘は腐食し、錆のイオンの影響で周辺の木質を劣化させるので、これを全て除去した。穴はアクリル樹脂で強化した。
 7.釘穴補修
    釘穴にヒノキの棒を差し込み、再び接合の際に釘を打ち込む場所とした。
 8.クリーニング 
    長年のホコリ、ススをクリーニングした。
 9.解体写真
    解体した状態を写真に記録した。
 10.組み立て
    麦漆、エポキシ樹脂系接着剤、錆びないステンレス釘等を併用して組み立てを行った。
 11.補強材
     内部に補強材を設け構造を強化した。(胴の前角の内側、背面)
 12.補修
    欠失箇所、矧目に漆木屎(漆+小麦粉+木粉)を用いて補修を行った。
 13.下地
    漆塗膜を復元する部分に下地を施した。(必要最低限に行った)
 14.漆塗り
    下地を施した部分に漆を塗った。
 15.漆箔
    必要な部分に金箔を貼った。
 16.補彩
    補修部分にのみ周囲と違和感のないよう、補彩を施した。
 17.修復銘札納入
    今回の修復の記録として、尊像名、修復年月日、ご住職様名、修復に関わった人の名、修復工房名などを桧板に墨書していただき、台座内部に納入した。
 18.修復完成写真
    修復後の状態を写真撮影し記録した。
 19.修復報告書作成
    写真を用いた修復報告書を作成した。
 20.搬入
    薄葉紙、紙座布団などを使用して厳重に梱包して搬送した。 
 21.安置
    修復工程のご説明後に像を安置した。

 

 

 ◆修復後記


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