木造不動明王坐像  [市指定有形文化財]
 文化二年(1805) 木喰五行作
   総高 109.0cm

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新潟県の寺院(真言宗) 

●修復前



●修復作業


●修復後

 Y 形状
 総髪、頭部右に巻髪。瞋目。頭左側に弁髪。左牙上出、右牙下出。顎髭をあらわす。左手は火焔光に隠れる。右手は屈臂し、右腹前にて掌を腹側に向け五指を捻じ、持物(宝剣)を執る。裙を着ける。腕釧、臂釧を着ける。台座上(方座、岩座)に結跏趺坐する。火焔光背。

Z 品質・構造
 木造一木造り(広葉樹材)。内刳りなし。彫眼。本体、台座、光背を一材より彫出する。持物の宝剣は鉄製。

[ 損傷状況・後補箇所
●損傷状況
 ・木材が一部腐朽しており、強度が低下している部分があった。
 ・欠片が残されている部分があった。
 ・小欠失部分があった。

●後補箇所
  宝剣。

\ 墨書等
[背面]
 梵字(カーン:不動明王)
 作 天一自在 法門 八十八才
 大山不動明王  木喰五行菩薩(花押)
 文化二年閏八月廿七八日

] 所見
  ・制作は文化二年(1805)8月27・28日。88才と書かれているので、10才引いて78才の時。迫力のある造形を彫出している。

]T 修復基本方針
・御像の歴史を尊重した文化財としての修復を行う。安易な塗り直し修理は行わなかった。
・合成樹脂を用いて、出来るだけ濡れ色の出ないよう、腐朽部分の強化処置を行い、出来るだけ現状の状態にて修復を行った。
・干割れ部分は、全部閉じてしまうと、歪みが生じて他の部分に干割れが生じる危険もあるために、背面ということもあり、開けておくべきと考えた。また、腐朽部分は上に大きく補修を施すと、蒸れて腐朽が進行する危険もあるため、通気を考え必要以上に補修を行わない方針をとった。

]U 修復工程
1.搬出
   薄葉紙、紙座布団などを使用して厳重に梱包して搬出した。 
2.修復前写真撮影
   修復前の状態を写真に記録した。
3.腐朽部強化
   腐朽している部分のみに、出来るだけ濡れ色の出ないよう、アクリル樹脂を含浸し強化した。
4.接合
   別に残されていた欠片をエポキシ系接着剤にて接合した。
5.補修
   必要な部分に漆木屎(漆+小麦粉+木粉)を用いて補修した。
6.補彩
   補修した部分にのみ、色を置き、周囲と違和感のないようにした。
7.修復完成写真
   修復後の状態を写真撮影し記録した。
8.修復報告書作成
   写真を用いた修復報告書を作成した。
9.搬入
   薄葉紙、紙座布団などを使用して厳重に梱包して搬送した。 
10.安置
   修復工程のご説明後に像を安置した。

 ◆修復後記
・仏像に興味を持った最初が木喰仏でしたので、初めて木喰仏修復に携われて非常にうれしかったです。
・背面のウロはこれ以上腐朽が進まないように処置し、形状を整理する程度に納めました。


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